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徒然に.

創価学会について思うことを書く予定です.

ブックレビュー:玉野(2008)『創価学会の研究』

今回は玉野氏の著作創価学会の研究』*1について簡単に紹介したい.

著者について

著者の玉野氏は首都大学東京人文科学研究科に所属する社会学分野の教授である.『東京のローカル・コミュニティ』*2という著書の執筆に際して創価学会を取りあげ,それを機に出版社からのすすめで『創価学会の研究』を著した*3.彼は創価学会員ではないが,第三文明社など創価学会系列の出版社へいくつかの寄稿を行っている.

本書の構成

本書は5つの章から成っている.

第1章「学会員たちの信仰生活」では,主に会員の信仰生活をいくつかの事例も交えながら紹介している.また,会員の宗教活動を「幸せにするシステム」という観点から捉え論じている.

第2章「創価学会の基礎知識」では,創価学会の歴史を概観した後に,その宗教・仏教的背景,組織体制,政治との関係性,およびマス・メディアや世間からの扱いについて述べられている.

第3章「創価学会についての研究」では,時系列にいままでの創価学会を対象とした研究についてまとめられている.

第4章「創価学会の変化」では,会員数の変化要因を日蓮正宗との分離,自公連立政権の実現などに求め,最後に学会員の社会的地位の上昇について記されている.

第5章「これからの創価学会」では,自民党との対比を中心に創価学会の支持層とその未来について考察されている.

本書の特徴

まず,創価学会に関連する書物に扇動的なものが多い中で*4,冷静で中立的な記述に努めようとしている点が特徴的である.しかし,何といっても本書の最大の特徴は,そのタイトルでもある「創価学会の研究」レビュー(第3章)であろう.本章では,海外のものも含め,先行研究を12紹介している.中でも,ホワイト(1971)*5による社会学的研究は最高峰と位置付けられており,独自調査による統計分析や池田大作氏本人への面接調査を含む大規模なもので興味深い.1970年代以降,創価学会の研究はほとんどなされておらず,またその方法も社会学的な手法に限定されているようである.

第1章の「幸せにするシステム」とは,創価学会の組織的機能と会員個人の勤行・唱題,折伏および教学研鑽といった宗教活動との相互作用の合理的側面についての言及である.比喩表現が多く解釈の難しい仏教的な考察を敢えて排し,実際に何が行われておりそれがどのように機能しているかという実証的な視点に立脚する著者の姿勢と鋭い観察眼がうかがえる極めて価値的な章である.第4章,第5章は政治的な議論にほぼ終始しており,とりわけ第5章の「これからの創価学会」において今後の創価学会に必要とされることは何であるかという視点が欠けている点は残念である*6

創価学会の研究」

幸せを達成するための重要な要素の1つとして,宗教を指摘する文献が増えてきている*7.しかし,必ずしもそのメカニズムは明らかではなく,将来的には単なる宗教というブラックボックスから「幸福」の寄与に有効な仕組みを抽出し,我々の日常にうまく取り入れていく必要があるだろう.創価学会は1970年代までに急激に会員数を増加させ,現在は192カ国地域にまでその勢力を拡大している.その過程で実践された「幸せにするシステム」は果たして本当に機能しているのか,その外的妥当性はどの程度なのかを理論・実証の双方から明らかにする「創価学会の研究」が今後強く望まれるだろう.

*1:玉野和志(2008)『創価学会の研究』講談社現代新書

*2:玉野和志(2005)『東京のローカル・コミュニティ―ある町の物語一九〇〇‐八〇』東京大学出版会

*3:玉野(2008)のp.206を参照

*4:第三者が執筆した創価学会に関係する書籍のうち実際にどの程度の割合が扇動的なものであり,また扇動的であると断定するための基準は何かということを私は知らないので「扇動的なものが多い」という表現は私の妄想でしかない.

*5:J.W.ホワイト,宗教社会学研究会訳(1971)『創価学会レポート』雄渾社.

*6:ある創価学会の中心的な思想が現状の日本において重要な役割を果たすかどうかといった問いが投げかけられているが(玉野(2008)のpp.204-205)明示的にその答えは掲示されていない.

*7:例えば, Andrew Clark and Orsolya Lelkes(2009)"Let us pray: religious interactions in life satisfaction,"Paris School of Economics Woking Papers.