徒然に.

創価学会について思うことを書く予定です.

内生的折伏決定理論

これまで2回に亘って創価学会員の宗教活動および勧誘活動のメリット・デメリットを考えてきた(以下のエントリ).

今回はこれらを踏まえて,彼らの勧誘活動の程度がどのような水準で決定されるのかを数学的に表現してみたい.

数学的表現

宗教勧誘される人物Xの認識する信仰メリット・デメリットを表現した効用U^Xを,宗教勧誘を行う人物Yの勧誘活動の程度(以下,「折伏量」)aの関数として以下のように表現する.

 U^X(a)=\sum_{i=1}^{3}u^X_i(a)

但し,u_1(a)Xの認識する「わかりやすい」信仰メリット,u_2(a)Xの認識する「わかりにくい」信仰メリット,u_3(a)Xの認識する信仰デメリットを表す(これらの部分効用関数の性質は以前のエントリ「勧誘と入会 ver.2 - 徒然に.」と同様である.)

一方,YXへの折伏による効用U^Y折伏aの関数として以下のように表現する.

 U^Y(a)=\sum_{j=1}^{2}u^Y_j(a)

但し,部分効用関数u^Y_1(a)折伏によるYのメリット,u^Y_2(a)折伏によるYのデメリットである.また,これらの部分効用関数が定義域全体a \in [0, \infty )で二階微分可能であることを仮定し,

u^Y_1(a) \ge 0, u^Y_1(0)=0, \frac{du^Y_1}{da} \ge 0, \frac{d^2u^Y_1}{da^2} \le 0,

u^Y_2(a) \le 0, u^Y_2(0)=0, \frac{du^Y_2}{da} \le 0, \frac{d^2u^Y_2}{da^2} \le 0

を満たすものとする.上記, \frac{d^2u^Y_2}{da^2} \le 0Y折伏によるデメリットが折伏量の増加にともなって限界的に増加することを示しており,仕事や学業といった日常生活に支障が出てくるような折伏量の水準が存在するという制約であると考えて差し支えない.

もしU^Y(a) \le 0であれば,Yによって折伏は行われないので,a=0となり,U^X(0)=0Xは入会しない.したがって以下,U^Y(a) \gt 0の場合を考える.

Yが合理的であれば,Yの最適折伏a^*U^Y(a)が最大となる水準で決定されるはずである.即ち, \max U^Y(a)の一階の条件(FOC)は

 FOC:  \frac{dU^Y(a)}{da} = \frac{du^Y_1(a)}{da} + \frac{du^Y_2(a)}{da} = 0

であり,このFOCを満たすように最適折伏a^*が決定される.

Xはこのa^*を所与として,入会の如何を決定する.もしU^X(a^*) \gt 0であれば,Xは晴れて入会することになる.一方で、U^X(a^*) \le 0のとき,a^*Xの入会に必要な折伏 \bar{a}を下回っていると考えられ,Xは入会しない.ここで,Y折伏が実ることで追加的に\piという効用を得ることとしよう.このときYには以下の3つのオプションが考えられる.

  • オプションA:a^*から追加的に \Delta a折伏を行って \Delta uを失う代わりに,確率p_1 \piを得,確率1-p_1折伏は実らない.
  • オプションB:費用Cを支払うことで,他の信者Zに追加的な折伏を依頼し,確率p_2 \piを得,確率 1-p_2折伏は実らない.
  • オプションC:何もしない.

オプションAは,折伏が実ったときの効用 \piを得るために,最適折伏a^*以上に折伏を行うという選択肢である.オプションBはYの最適な折伏水準a^*では折伏が成就しないため,他の信者Zに費用Cだけ支払うことで,追加的な折伏を依頼する選択肢である.オプションCは,Yの最適折伏a^*では折伏が成就しなかったので,これ以上の折伏を諦める選択肢である.オプションA,Bの期待効用をそれぞれE_A, E_Bとすると,

 E_A = p_1 \pi + \Delta u,

 E_B = p_2 \pi - C

である.もしYが危険中立的で且つE_A \le 0, E_B \le 0ならば,YはオプションCを選択するであろう.もしYが危険中立的で且つE_A \gt 0またはE_B \gt 0ならば, E_A \ge E_B \rightarrowオプションAを, E_A \le E_B \rightarrowオプションBを選択するであろう.

ここでのp_1,p_2はそれぞれY,Z折伏の力を表していると考えられる.もし,Y折伏の力がZよりも大きいと考えられる場合は,YCを支払ってZ折伏を委託せず,自ら折伏の継続を選択する(オプションA)だろう.一方で,定数C組織の機能性を代理していると考えられる.もしYZと極めて密な関係にあればその委託費用Cは小さく,YZ折伏の協力を仰ぐ(オプションB).また,利得 \pi利他性を代表する効用とも考えられる.もしYが利他的でないのならば, \piの値はゼロであり,Yはこれ以上の折伏を投入しない(オプションC).もちろん,E_Aaに関する減少関数であり, a = a^*の時点でE_A(a^*+\Delta a) \gt E_Bであったとしても、折伏投入量 \hat{a} \in [a^*, \infty)において E_A(\hat{a}) \lt E_Bとなることも考えられる.つまり,最適折伏a^*からまずオプションBをとり,後にオプションCに切り替えるといったケースもありうる.

Yが最終的にオプションCを選択した場合,折伏の協力を承諾したZも上述のオプションに直面し,更に他の信者へ折伏の協力を依頼するかもしれない.この過程は,折伏aを大幅に増加させ,Xが入会を決定する折伏 \bar{a}の超過を確実なものとするようにみえる.しかし,もしXの効用U^X(a)折伏により一定の下限 \underline{U^X}を下回ると信者へのアクセスを絶ち,折伏が不可能となることを想定すれば,組織的な折伏活動が実を結ばない一つのケースを本モデルで説明可能となる.

以上のように今回は,信者による折伏量の決定を内生的に扱うことで,折伏による入会決定のメカニズムを説明した.本モデルでは,折伏の能力,組織的な折伏行動,信者の利他性および友人の折伏拒否という変数を明示的に扱うことが可能となっている.一方で,具体的な部分効用関数の形状や期待効用関数におけるリスク回避度,オプション選択の動学的かつ詳細な分析など未だ多くの課題が残されているのも事実である.折伏に関する考察についてはひとまず筆を休め,次回からは他の宗教活動について考えてみたい.